XC60は過去にガソリン車であるT5インスクリプションに試乗していますが、今回はディーゼル車のD4インスクリプションに試乗。しかも珍しいエアサス搭載車ということで楽しい試乗でした。現在私はMINIクラブマンのディーゼルに乗っているのですが、ガソリン、ディーゼルにはそれぞれメリットとデメリットがあるもの。それを踏まえてXC60はどちらを買うか?と考えたら、間違いなくディーゼルを選びます。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンは、お互いの特性が近くなっますよね。ガソリンエンジンの場合、排気量を減らしてターボでトルクを出すダウンサイジングターボで「うわ、これトルク無いなー」と感じる場面なんてほぼありません。それだけしっかりトルクが出ているのです。その上で回せばやっぱりディーゼルよりスカッと回るし振動が少ない、音が静というメリットがそのまま残っている感じ。対してディーゼルエンジンは車に乗り込んでしまえばガーガーという騒音は気にならないレベルまで静かになり、アクセルを踏み込んでもけっこうシューンと回ってしまいます。そして分厚いトルクは明らかにガソリンエンジンより上であり、余裕あるクルージングが楽しめます。ただ車外でアイドリング音を聞くと、ディーゼル車はそれなりにガーガーといった音が聞こえますし、運転していても多少のゴロゴロ感は感じます。みんな言うことですが、ガソリンかディーゼルどちらを選ぶかは、車外での音と、走行中の多少のゴロゴロ感が気になるかどうか?を燃費の良さと天秤にかけ、どちらを取るかだと思うんですよ。私の場合XC60の音と振動は気にならないのでディーゼルを選ぶのですが、価格的にかなりの高級車なので、その価格にゴロゴロした感じが似つかわしくないからガソリンを選ぶ、という人がいても不思議はないという感じですね。
新しくなったXC60のエンジンは先代と形式が同じですが、排気ガスの浄化にアドブルーを使うようになりました。軽油を高温で燃焼させるとNOx(窒素酸化物)の発生が増え、PM(スス)の発生は減るのですが、アドブルーを使えばNOxを浄化できるので燃焼温度を上げてPMを減らすことができる。パワーを出しつつ有害物質の排出を減らせることになりますが、コストが高いという弱点もあります。アドブルーを使うことでパワーがあって燃費も良ければバンザイなのですが、スペック的に先代XC60ディーゼルと比較すると、パワーは190ps/4250rpmでピッタリ同じ。トルクは400Nmの最大値は同じですが発生回転数が先代の1750rpmから250rpm下がっています。そして燃費は先代18.6km/Lに対して新型は16.1km/L。車重が90kg重くなっているけどそれだけで2.7km/Lも燃費が悪くなることは思えず、アドブルーは動力性能よりも排気ガスのクリーンさ重視で選ばれた、ということなんでしょうかね。
前置きが長くなりましたが、運転してみると1900kg以上(人間を入れると2トンを超える)あるとは思えない軽やかな走り出しで、駆動抵抗が少なくスッと動き出すように感じます。が、これはさらに大きいXC90のガソリン車でも似たような感覚でして、特にディーゼルだからどうということはありません。それくらいガソリン車も低速トルクがあるのです。やや混み気味の道を走る中でディーゼルっぽさを感じるのは、わずかに発生するコロコロという類の振動と音。試乗中はラジオを消しているので、音楽でもかければ音に関しては気にしなくていいレベルですが、振動はガソリンに比べればやっぱり感じますね。営業さん曰くアドブルーを使うことでアクセルレスポンスの向上と排気ガスのクリーンさを両立できたということで、確かに少しだけアクセルを踏んだ時なんかはスッと前に出てくれ、ドライバーの操作に対する「タメ」が少ないように感じました。深くアクセルを踏み込むと今度はシフトダウンのレスポンスも関係してくるので評価が複雑になりますが、ジワリと加速するシーンでは確かにレスポンスの良い反応です。
バイパス道路へ坂を上りながら加速して合流、というシーンで少しアクセルを踏み込んでみると、まずシフトダウンを的確に行い、モリモリのトルクで車を押し出す力はかなりのもの。そして回転は滑らかに上がり、タコメーターの針もスカーンと上昇するのでガソリンエンジンかと錯覚しそうになります。速度の伸びもそういったフィーリングに比例して上がっていくので、結果、気持ちいいし速いエンジンであると言えます。
エアサスの乗り心地ですが、私がエアサスの車を運転するのはたぶん初めてだと思います。どんなものか楽しみにしていましたが、ノーマルモードであるコンフォートで乗る限り、以前試乗したノーマルサスのXC60 T5と非常に似た乗り心地でした。路面の凹凸をうまく吸収し、体への衝撃を抑えてくれるんだけど、柔らかいか?と聞かれれば決して柔らかくはない。しっかりしているけど固くもないという理想的なものです。設定をダイナミックにすると、乗り心地は少し固くなったかな?という程度の変化ですがコーナーリング時のロールは明らかに減り、2トンの巨体が意外に俊敏に曲がるのには驚きました。可変ステアリングギヤレシオとか、後輪操舵、もしくは内側のブレーキを少しかけて曲げている?と色々考えたのですが、どうやら可変ステアリングと後輪操舵は付いていないみたい。内側のブレーキをかけるのは緊急回避を素早く安全に行う時に使われるそうですが、そこまで激しい操作はしておらず、ちょっと速度の高いコーナーリング程度で作動するのかは不明。そんなことを考えたくなるくらいスイっと曲がったのです。XC40ならそんなに驚きませんが、大柄で重いXC60が軽々と曲がるのには驚きました。エアサス付きでダイナミックを選ぶと車高が4cm下がるそうで、その相乗効果かも。エアサスは30万円のオプションですが、車体価格が700万円なのでなんとなく安い気がしてきますね。乗り心地が酷く悪化することはないし、足回りはダイナミック、アクセルレスポンスはノーマルというカスタム設定もできるので、けっこうアリなオプションかもしれません。壊れなければ・・・
リヤサスの画像。蛇腹みたいなのがエアサスのユニット。性能も大切ですが、車高が変わる、というのにトキメク・・・乗り降りの際は一番低い車高にしてくれるみたいですよ。作動速度はフロント、リア合わせて4秒くらいでしょうか。作動音も静かで、室内に乗っていればまったく聞こえませんし、車を降りて聞いてもわずかにウィーンと聞こえる程度です。
バイパス道路をクルージングするのは快適そのものでした。先に述べたフラットかつ頼りがいのある乗り心地。路面の状態を雑味を消しつつ伝えてくれる適度にゆるいハンドリング。ロードノイズの遮断もかなりハイレベル。そして力持ちで燃費の良いディーゼルエンジン。センスの良いインテリア。ボルボ得意のハンドルまでアシストしてくれるパイロット・アシストの完成度も高いですし、XC60は最強クラスのツーリングマシンではないでしょうか。唯一、細かいところですがデジタルメーターの解像度が低いのをXC90の頃から私は気にしており、これはマイナーチェンジで改良されるかもしれませんが当分先ですね。下の画像はXC90だけどXC60も共通。パイロット・アシストについての記事はこちら。
もっと町中で見かけてもいいと思うXC60。しかし相変わらず在庫は無し、納期は約半年後ということでした。それは・・・苦しいですね。XC40に至っては9ヶ月待ちだそうな。せめてXC60が3ヶ月、XC40が半年くらいだと、それくらいなら待つという人も増えると思うんですけど、生産台数は「売れてるから増やすか」で増やせるものではありませんからね・・・難しいところです。正直に言いますと、新車は高いので中古車が増えるのを願っているんですよ!新車が売れないと中古車の値段も下がらないじゃないですか。まぁ私は背の低い車が好きなので本命はV60、もしくは値下がったV90なんですけど、ジャンジャン売れて中古が増えるといいなーと思いますw
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