ロードスターのマフラー交換をして、動画編集で何度も聴いていたら高回転時の音が和音に聴こえてきました。そこで波形を確認してみると、ホントに和音っぽい波形が出ているじゃありませんか。これ、倍音といって、マフラー音に限らず自然界の音すべてに発生する現象だそうです。実はピアノでドの音を出しても、10個くらい同時に音が鳴るらしい!45年生きていて知らなかった・・・
ピアノのドの音で例えると、真ん中にあるドは約261Hzなのでこれを「基音」と呼び、倍音はその名の通り2倍、3倍、4倍・・・の周波数で発生するので順番に第二倍音、第三倍音と呼びます。もう少し詳しく言うと、2倍、3倍と規則正しく出る倍音を正数次倍音と呼び、それ以外のところに発生する音を非正数次倍音と呼びます。ドならどんな楽器でも基音は261Hzですが、倍音がどこでどのくらい強く出るかというバランスによってピアノ、ギター、トランペットなど、楽器それぞれの個性が出るんですね。ちなみに倍音がまったくない261Hzの音というのはピ-というテスト信号のような音になります。
排気音も音である以上倍音が発生し、これはロードスター エクスアートマフラーの波形ですがこんな感じに波形の山ができます。どんなマフラーにも(純正も直管も)必ずこのように山ができて、そのバランスによってマフラー音の個性が生まれるんですね。もう一度楽器で例えるなら、古いヴァイオリンなんかで音が変わったり、演奏者の弾き方でも音が変わるのも倍音のバランス変化によって起こるもの。なので一流芸能人が高額ヴァイオリンの音を当てるアレは、倍音まで聴き分けられる耳と、古い楽器にどのような特徴があるかという知識があれば可能、なのかもしれません。
ここから今回の本題。マフラー音について調べていくと、「排気音の音程というのはエンジンの気筒数と回転数でほぼ決まっている」という記事がいくつも出てきます。例として、4サイクルエンジン、4気筒、6000rpmが挙げられることが多いのでここでもその例で説明しますと、6000rpmとはクランクが1分間に6000回転することですね。そして4サイクルエンジンで1つのシリンダーに注目するとクランク2回転で1回爆発するので、6000÷2で1分間に3000回の爆発を起こします。周波数のHzは1秒間の振動回数ですから、3000÷60で秒間に直して50。これに気筒数の4を掛ける50×4で200。ということで基本的な周波数は200Hzとなります。
私がYouTubeにアップしたマフラー動画のキャプチャー画像で6000rpm時の波形を見てみると・・・
確かに基音の山は200Hzくらいの位置にありますね。
では、甲高い音と思っていたホンダのNA VTECエンジンはどうなのでしょう?ロードスターと同じ直4エンジンでも高い音が出るのか、YouTubeでEK9のマフラー動画をいくつかマイクで直録りして波形を見てみました。
タコメーターがいっしょに映ったマフラー動画というのが見つからなかったので、回転数が不明です。メーターが映っている動画は室内の音なのでエンジン音が混じってマフラー音が正確に分からないし、仕方ないので回転数は分からないまま話を進めますね。さっきの計算でいくと9000rpmまで回せば理論上は300Hzが基音になるはずだけど、どれも250Hz前後でした。これだと7500rpmくらいです。動画の投稿者さんがレッドゾーンまで回しているのか7500rpmまでなのか分かりませんが、すくなくともロードスターに比べて基音が高いということはなさそうです。が、実際には高い音が一直線に伸びていくように聴こえますから、これは倍音が大きく発生しているからであり、高性能エンジンで排気圧が高いから倍音が出やすいのでは?と予想しました。波形を見比べると私にはロードスターの方が高い音が出そうに見えるけど・・・
では排気ガスがタービンにぶつかり勢いを失うターボ車はどうなのか?音も低いイメージなので、ここらでハッキリさせる為に4気筒ターボのスイスポZ33Sの音をいくつか確認してみます。
EK9に続きこちらでも問題がありまして、どうもスイスポは空吹かしだとレブリミッターがあって5000rpmまでしか回せないらしい。5000rpmだと理論上は166.6Hzになるはずで、私が見た波形では161Hzなのでだいたい一致です。ということはターボ車だから基音が低いということはないんですね。が、実際に聴くと低く聞こえるので、排気の勢いが弱く倍音が強く出ないということか。
最後は3気筒ターボのGRヤリスです。最後に気筒数を掛ける計算なので、今までは4を掛けていましたがそれが3になると低い音になるはずですね。
こちらもタコメーターがいっしょに映っていない動画ばっかりで回転数不明・・・10個くらいマフラー音を聴いた感想としては、確かに音は低い。んで、「これ5000rpmくらいじゃない?もっと回るんじゃないの?」と感じました。一番回っていそうな動画から波形を出してみるとMAX161Hzで、計算上は6500rpm弱ということになります。GRヤリスのレッドゾーンは7000rpmなのでわりとしっかり回っているけど、音が低いからもっと回せるように感じるんですね。スイスポの5000rpmが161Hzだったので、それと同じ音がGRヤリスだと6500rpm必要ということになります。
ということで直4NAのロードスター、シビック タイプR。直4ターボのスイスポ、直3ターボのGRヤリスのマフラー音をなんとなく比べてみましたが、回転数÷2÷60×気筒数でマフラー音の基音が判別できるというのは正しいと思います。そして基音は判別できても倍音の発生加減によって人間の体感としては高くも低くも聴こえるのが分かりました。それからホンダVTECの音が明らかに他と異なる快音なのはエンジン音による影響が強いというのも分かります。直4のNAエンジンに限定してマイクをマフラー近くに設置した排気音だけの動画だと、車種を当てる自信はありませんが、マイクが室内にあってエンジン音まで聞こえればVTECは絶対分かります。うまく説明できませんがエンジンから発生するメカニカルノイズが独特であり、これが官能的なんですよね。
マフラー造りにおいては高い音を残して低い音を消すというのは難しいそうで(高周波の方が減衰しやすい)、それでも高音を出すサクラムなんかは内部構造がかなり特殊なのだと実感します。サイレンサー内部の部屋の大きさ、パイプの長さ、太さなど様々な要素で倍音をコントロールし、あの音を出しているんですね。一方エンジンから見ると高い音をヨシとするなら3気筒は圧倒的に不利だし、反対に低い音が好きならV8エンジンでは出しづらいことになります。マスタングなんかの大排気量V8エンジンってドロドロ低い音なイメージだけど、回すとやたら甲高い音が出るもんなぁ。
もっと詳しい人なら基音だけじゃなくて倍音の波形から「こういう波形の特徴は・・・」と考察できるのでしょうけど、私にそこまで知識はありませんし、この波形も1フレーム変わると形が大きく変化するので、一概に「この形だからこうだ!」と言えない面もあるんですよ。
それから回転数と気筒数で基音は決まるという話は、単気筒や2気筒エンジンのバイクみたくドコドコという鼓動が分かるくらい爆発の間隔が広い場合には当てはまりません。だって単気筒エンジンでアイドリング2000rpmなら計算上16.6Hzで、これって人間の聴こえる範囲を超えた低音になっちゃいますから。それに単気筒だって50ccから400ccオーバーまでいろいろあって、排気量が上がれば音は低くなりますから、式が使えるのは爆発音が連なって聴こえる回転数や気筒数に制限があるのだと思います。
以上、エンジンの排気音のことが分かったような、分からないような記事でした。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。最後にロードスター エクスアートマフラーの動画でも少し倍音について説明しているので、よろしければどうぞ。
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