フルモデルチェンジしたVWポロに試乗。新型ポロのシャシーはMQBとなりました。これはゴルフと共通であり、巨大グループであるVWが剛性、重量、汎用性、コストを高次元でバランスさせるべく作り上げた傑作品です。MQBを使うことで乗り心地と運動性で失敗はすることはないだろうと予想していましたが、この予想はだいたい当たっていました。乗り始めてすぐ分かる車体の剛性感と、タイヤが抵抗無く滑らかに転がるこの感覚はゴルフに似ています。しかし、ポロとゴルフにはしっかりした差があるのも事実でした。
ポロのエンジンは999ccの3気筒ターボ、トランスミッションは7速DSGの1本。ここに装備の違いによって3つのグレードがあるのですが、試乗車は上位グレードのハイラインで価格は265万円。ナビのディスカバーPro(226,800円)、ブラインドスポットモニターなどをセットにしたセーフティパッケージ(97,200円)も装備されており、フロアマットなどの小物を抜いても価格は2,97,4,000円、消費用込みだと約322万円になり、かなり立派な価格ですね。カラーはエナジェティックオレンジメタリック。メタリックですが無償カラー、と言うかポロには現在有償カラーが無いのでした。
ドアを開けて乗り込みますが、ドアハンドルの厚みはゴルフ譲りであり、ここは我が家のデミオには無いしっかり感があります。(国産コンパクトカーのドアハンドルは薄いものが多い)ドアの開閉音はコンパクトカーとして標準的でデミオと似た感じですが、ドアと車体の接合部はVWらしく前後共に鋳物のブロックでした。シートの座り心地はゴルフに負けず劣らず非常に良いです。一般的には見ればちょっと固めのクッションですが、私のクラブマンよりは少しだけ柔らかく、まさに「これくらいがちょうどいい」というジャストな固さで、体重を上手く分散してくれるし支えもしっかり。ハイラインのみちょっとスポーツっぽいシート形状になりますが、デザインとサポート力はやりすぎていない程度なものです。
ハイラインはスマートキーなのでスタートボタンでエンジンを始動(他はキーを差して捻るタイプ)させますが、始動の瞬間は3気筒っぽさを感じます。言葉にするのは難しいのですが雑味があるのですよ。まぁ一瞬のことですし、気にならない人には気にならないでしょう。振動はアイドリングでもそこそこ加速しても特に3気筒っぽいということは無いように思えました。それから走り出しだけはゆっくりアクセルを踏まないとグンッと走り出すクセがあり、ここは他のVW車と違う部分です。DSGのクラッチ操作のせいか、スロットルの開き始めを強めに設定しているのか、単に個体差なのか分かりませんが、他がどれも自然な動きをする中で唯一気になった部分です。まぁ静かにゆっくりアクセルを踏めばいいだけのことですが。
ディーラーから段差を越えて車道に出る際は4つのタイヤが順番にスルスルと段差を越え、車体が揺すられるようなことはありません。そして試乗コースには橋の段差を50〜60km/hで越える場所があるのですが、ここのクリアの仕方も非常に上手いですね。段差はタイヤとサスペンションだけでなるべく吸収する。人間が感じる突き上げは最小限に、というのが乗り心地の良い基本ですが、ただサスペンションを柔らかくしただけではコーナーで踏ん張れないとか、高速道路でフワフワするなどの弊害が出てきます。ポロのサスペンションはそんなに柔らかくはないのでコーナーでは踏ん張ってくれ、その上で体に感じるショックは丸め込んでくれるハイレベルなデキでした。こういった部分はゴルフそっくり。しかし似てはいてもゴルフの方がサスペンションの動きにしなやかさと強さあり、ショックの吸収具合は同じでも、さらに高い速度で安定して走る曲がるをこなしてくれる気がします。頼り甲斐があり、そういった部分がいわゆる「上質な乗り心地」として普段から感じられるのでしょう。
ブレーキの方はいつものVWと同様にコントロールしやすく一発目から静かに止めることができます。効きも十分ですし、先程述べたようにサスペンションがしっかりふんばるタイプなので急ブレーキをかけてもフロントの沈み込みというのも気になりません。なぜかクラブマンは静かに止めるのが難しく、いつまで経ってもできないんですよ。クリープ現象のパワーが強くて止める力とバランスが取りづらいとでも言うか・・・ポロ、と言うかVW車は全部一発で静かに止められていいですね!
ハンドリングについては普通に乗っている限り、自然の一言に尽きます。特に俊敏に曲がるとか、曲がらないとかは無く、ハンドルを切る、少し車が傾く、曲がって行くという一連の流れがごく自然に行われます。パワステのアシスト量が的確なのと、タイヤのグリップ感がステアリングにしっかり伝わってくるのは素晴らしく、これはVW全体的に同じことが言えますね。直進性も非常に良く、適当に気を抜いてステアリングを握っていても真っ直ぐ走ってくれるのは楽チンでした。ロードノイズの遮断は標準レベルでしょうか。クラブマンがけっこう五月蝿いので静かに感じましたが、たぶんデミオと同じくらいだと思います。
ここまではゴルフに近い性能を披露してくれたポロですが、差があるのはアクセルを踏んだ時です。パワー自体はそこそこあるしブーストの立ち上がりは鋭く、7速DSGの変速速度も手伝って性能的には満足できるのですが、加速時のエンジン音がゴルフほど澄んでいないのです。擬音語にするならゴルフは「グォォオオン」で、ポロは「ブゥゥウウン」といった感じでしょうか。交通の流れに乗る程度ならまったく気にならなかったエンジン音が、半分くらいアクセルを踏み込むと「ああ、やっぱり3気筒なんだな」と感じてしまうんですね。アクセルを踏み込むのが好きな人には気になる部分かもしれませんし、さほど踏まない人にはまったく気にならないのでしょう。
今回は動画もありますので合わせてご覧いただければ幸いです。
ということでMQBを採用した新型ポロはコンパクトカーとして求められる快適な乗り心地と必要にして十分なパワーを持ち、長距離ツアラーとしても十分に使える直進性の良さ、シートの座り心地の良さ、ハンドルの感触を持っていると分かりました。ボディのプレスラインの質は真似することができないレベルで高品位ですし、内装もナビが高い位置に取り付けられたことで見やすくなり、ほぼスキはありません。最強コンパクトカーだと思って買った嫁さんのDJデミオも「クラスを超えたどっしりした走り」という点ではポロに敵いません。しかしコストパフォーマンスを考えるとデミオに軍配が上がると思っています。やっぱデミオはあの性能でXDツーリングが200万円という価格が凄いのです!
それとポロはサイズが大きくなったことで、ゴルフのトレンドライン、コンフォートラインと迷いが出てくる可能性がありますね。特に現在ゴルフにはテックエディションという特別仕様車が設定されており、これはコンフォートラインとハイラインに設定されるのですが、コンフォートラインの場合はディタルメータークラスターのアクティブインフォディスプレイとナビのディスカバープロ、LEDヘッドライトが装備され価格が299.9万円という驚異の低価格となっています。最初に書きましたがポロにディスカバープロとセーフティパッケージを付けると297.4万円なので、価格差はほぼありません。となると私ならゴルフを買いたくなります。ポロの価格がやや高く(装備を考えると不当な程ではないけど)、ゴルフ テックエディションが超安いのでこういう現象が起きるワケで、この2つの差は30万円くらいあっていいと思うんですよ。ゴルフが欲しい人にはこの上なくいい話しですけどね。
長くなってきたのでポロのグレードと装備については次回、画像で各部を見ながらお話したいと思います。続きはこちら。
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