20年くらい前でしょうか?ドラマや食品などの韓国ブームにノッて韓国の自動車も少しだけ日本に入ってきた時期がありました。そのメインがヒュンダイで、ドラマ「冬のソナタ」が大ブレイクしていたことから主演ペ・ヨンジュンがCMするソナタというセダンを販売していたはず。私はその頃から車好きだったので日本で販売されたブランドと車種はだいたい分かるのですが、ヒュンダイだけはソナタ以外の名前が出てきませんし、そのソナタも特徴の無い中型セダンという認識でどんな車だったかまったく覚い出せませんでした。
で、当時の広告写真。そーそー、こんな感じだった。ホンダやオペルっぽいデザインですね。
そんなヒュンダイ、日本での販売はボロボロでした。国産車が優秀、輸入車は高級か趣味性の高いものという土台が出来上がっている日本において中途半端な性能と価格、ブランドもよく分からないヒュンダイが入り込むスキは微塵もなく、2001年から販売をスタートしたヒュンダイは最初の5年はそこそこ(と言っても年間2000台くらい)売れたものの後半は笑えない販売台数になり、2010年に撤退するのでした。ヒュンダイが日本に進出する少し前の1997年、サターンというアメリカブランドが日本に入ってきましたけど販売が振るわず2001年に撤退という前例があったのにね。
そんなヒュンダイですが実はアメリカではよく売れているブランドでして、2021年度の世界販売台数は666万8037台(傘下のキア含む)とされています。これは900~1000万台規模のトヨタやVWには及ばないもののホンダや日産を超える数字であることからかなりの実力を持つブランドだということが伺えますし、EVやFCVも頑張って開発・販売しているそうです。
そんなヒュンダイが名前を「ヒュンデ」に改めて再度日本での販売を開始しました。車種はハッチバックEVであるIONIQ5(アイオニック5)とSUV型FCVのNEXO(ネッソ)の2種類のみ、販売はオンラインのみというかなり割り切った売り方で、ショールームは都心部に作るもののディーラー網を築くお金はかけずとりあえず様子見といった感じでしょうか。車種の選定は良いと思います。まだまだガソリン車が多い中、EVとFCVはエコでクリーンかつ先進性を感じさせ、ブランドイメージを良いモノにしてくれますから。
まずアイオニック5を見てみると、全長×全幅×全高が4635×1890×1645mm、車重1870~2100kgとかなりデカくて重い車でした。同じEVの日産リーフは4480×1790×1565mm、1680kgとかなりコンパクトで軽いことが分かります。ボディの3サイズに関してはハッチバックやワゴンと比較して幅が広く、日本車でいうなら中型SUV並(レクサスRXが1895mm)の幅があると思ってください。車重が重いのはEVなので仕方なくアルファードと同等か少し軽いくらい。グリスレスのEVらしいフロントデザインは馴染めないけど全体的にはシンプルでけっこう好きだったりします。ちょっとアウディA3っぽいかな。
グレードはバッテリー容量58.0kWhの廉価版が1種類、バッテリー容量が72.6kWhに増えたモデルが装備違いで2種類、AWDモデルが1つ。価格は下から479万円、519万円、549万円、589万円と決して高すぎないもになっており、満充電での走行可能距離はバッテリー小モデルで498km、大モデルは618km(AWDは577km)となっています。最大のライバルは最近よく見かけるようになったテスラ モデル3で、こちらは4694×1849×1443mmというサイズにAWDモデルが1850kg、航続距離565km、お値段564万円とサイズ、価格ともにガチンコ勝負です。
テールランプのデザインはレトロで好き。これ見るとフロントもレトロっぽく見えてきて一瞬悪くないか?と思いましたがグリルレスなのがやっぱイカンw
インテリアは強い個性が無いけど普通で使いやすそうな感じですね。さらっとアイオニック5を紹介しましたが、そつなくクリーンなデザインはGOODで、乗り心地や遮音性が良ければそれなりに売れるポテンシャルのある、新生ヒュンデブランド一発目として良い車だと思います。
2022年6月追記 韓国でアイオニック5が衝突事故で発火し、乗っていた全員が死亡する事故がありました。警察の分析によると車は衝突から3秒で発火し、乗員が逃げる間もなく燃え広がった。消防士は連絡から15分で現場に到着したが燃えた車両は鎮火に7時間かかったと報道され、マジかよと思って調べてみました。どうやら高速道路の料金所で起こった事故のようで、そこはECTではなく現金支払いのみなので事故車両の速度は意外に低く40km/hくらいではないかと言われていました。EVのリチウムイオンバッテリーは衝撃が加わったり変形すると瞬間に発火し、その温度は800度くらいまで上がるそうな。たまにEVのカットモデルなんかで大きなバッテリーが床下に配置されいるのを見ますが、あの内部は小さなセルをいくつも並べたものが敷き詰められており、衝突により端っこのセルが破損発火すると連続的に発火が起こることで延々燃えるんですね。しかもケース内にビッシリ敷いてあるので水をかけても中まで水が届かず温度が下がらないということで鎮火に時間がかかるそうです。
衝突から3秒で発火し逃げ出す間もなく燃えるというのは恐怖で、そういった可能性がEVの車すべてにあるワケですが、この事故での車の速度は40km/hというから私は考えました。ダミー人形乗せて際乗員をどのくらい保護できるか計測する衝突実験ってもっと高い速度でやってるけど、その時は燃えなかったのか?と。あくまでも乗員の保護を調べるものだからバッテリーは充電されていないのか。そうえいばガソリン車もガソリン入ってるか分かんないし、室内で実験してるから爆発されると困るしなぁ・・・ガソリンもバッテリーも空で実験するのかもしれませんね。どっちにしてもこの事故を知るとEVは怖いです。日本でも日産サクラという軽EVが発表されいきなり1万台予約が入ったそうですが、大丈夫なのかちょっと心配。 以上、追記終わり。
お次はもう一台のFCVであるNEXO(ネッソ)。FCVとはFuel Cell Vehicleの略で、タンクに充填した水素ガスと空気中の酸素を化学反応させ電気を発生させて走る乗り物。排出されるのは水のみというクリーンな乗り物で、日本ではトヨタ ミライが発売されています。以前マツダやBMWも水素自動車を開発していましたが、こちらは水素を爆発させてエンジンを動かすことから似て非なるものでした。ちなみに私は旧型のトヨタ ミライに試乗したことがあるのですが(その時の記事はこちら)感想としては普通のEVで特別何も感じませんでした。そりゃ電気とモーターで走るのですからEVですし、水素で走っていることがすごい車ですからねw FCVとEVの違いは充電ではなく水素ガスの充填なのでガソリンを給油する感覚に近く短時間で充填できること。デメリットは水素を充填できる水素ステーションの数がすごく少ないこと。
ネッソのスリーサイズは4670×1860×1640mm、車重1870kg。アイオニック5とあんまり変わらないんですね。日本人的にはエクストレイルが4690×1820×1730mmなのでなんとなく近いサイズだけど全高が意外に低いのでSUVとワゴンの中間みたいな感じか。水素ガスのタンクは3個搭載されており、その容量は合計156.6L。このタンクに70Mpaの圧力で水素を充填できる設計で航続距離は820km。グレードは1つ、前輪駆動で価格は約777万円です。ちなみに現行型ミライはタンク容量141L(圧力は70Mpa)で航続距離が一番安いグレードで850km、その他のグレードは750km。価格は710万~860万円なので良いライバル関係ですね。
デザインはこちらもそつなくまとまっています。エクストレイルとシトロエンの何かを混ぜたように見えますが、今のSUVってヘッドライトやグリルやテールランプは違えど直線基調タイプか曲面タイプに分かれる程度で似たようなものですから気にしないことにしましょう。SUVの方が一般人ウケするけどトヨタがミライをセダンで売っているのは法人向けをメインに見据えているからかな?パーソナルユースで考えるとネッソの方が合いそうですね。
内装は高めのセンターコンソールで左右を分けるタイプで、デザインそのものは好きなのですがそのコンソールに物理ボタンがみっしり並んでいるのはどうかと思う。エアコン系は物理スイッチ、それ以外はダイヤルコントローラーに集約させてブラインドタッチできるようにしてほしいものです。
ということでヒュンデの2台をサラッと紹介してみました。最初に書いたように独自の車文化を持つ日本で販売していく第一歩としてEVとFCVのみというのは面白いと思いますし、そのスペックや価格も妥当なもののように思えます。点検や車検はどうなるのか分かりませんけど、その辺りが特に不便なくできるのならそこそこの台数が売れるかもしれません。あくまでもEVやFCVとしては、ですが。
最後に私の個人的な考えですが、EV1台で仕事から遊びまで生活の全てを快適にこなせるか?と考えると答えはNOです。自宅で充電できて通勤に使うだけならOKですが、旅行にも使うとなると正直嫌。航続距離400kmを謳っていても暖房使えば300km以下まで減り、5年後にはバッテリーの劣化により100kmくらいになっていてもおかしくない。そして新車状態でもバッテリー温度が高いと充電が進まず、高速道路を使って長距離移動するには何度も充電しなければならない点で不便すぎます。EVユーザーが増えると充電待ちも発生し、1回30分なら2人並んでいただけでも1時間後ですからやってられません。外国に目を向けるとノルウェーのEV率が非常に高く、充電設備もかなりの数があるのに充電待ちは問題になっているそうですからね。(ノルウェーは人口537万人、充電設備16000ヶ所。日本は人口1億2580万人で充電設備18000ヶ所)
街乗り専用の小型車ならばEVは悪くないと思うんですよ。バッテリーが減ったら自宅で一晩充電するスタイルなら充電待ちも高温で充電できない問題も無く、小型バッテリーなら車体価格もそこまで高くなりません。もし日本が本気で自動車によるCO2排出量を減らしたいのなら、こういった生活密着型の小型EVは購入資金援助&自動車税一生タダ、自宅充電設備費用負担くらいしないとダメです。自宅充電のみで使うことを前提とすれば高速道路などの充電ステーションを増やす時間稼ぎをしつつEVの台数を増やすことができるかと。
現状のEVの使い勝手に懐疑的な私はFCVは良いと思っています。なんと言ってもガソリンと同じように短時間で満タンまで水素が充填できるのが良い。短時間で充填できれば何台も並ぶことも少ないですし。難点は水素ステーションがEVの充電設備より遥かに少ない点で、現在の日本には158ヶ所しかなく、燃料入れるのに往復1時間かかるなんてことになると不便極まりない。水素ステーションを作るのにお金がかかるし、その水素を輸送するタンクローリー的なものも一度に運べる量がガソリンより少ないのも問題です。あ、量が少ないというのは語弊がありますね。ネッソやミライが航続距離700km超えを達成する為にタンク容量は150Lくらいあるのですが、ガソリン車のタンクは50Lくらいで700kmくらい走れます。タンクローリーのタンク容量が15000Lとした場合、ガソリンなら300台分運べるけど水素ガスだと100台分しか運べないことになるんですね。単純すぎるかもしれませんが全部の車がFCVになり全てのガソリンスタンドが水素ステーションになると、タンクローリーの数も3倍にしないと追いつかない計算です。それは無理な話なので理想は道路の下にガス管みたく水素管を引き、スタンドまではパイプで供給でしょうか。どのくらいお金がかかるのか見当も付きませんが、FCVがめちゃくちゃ増えるとこういう対応になるのではないかと思います。
長々と書いてきたけどヒュンデの車は悪くなさそうなので今後どうなるか楽しみです。特にネッソはFCVというジャンルを目立たせるのに頑張ってほしいな。だってバッテリーで走る車は100年くらい昔からあるけど水素と酸素の化学反応で電気を発生させて走るとかロマンあるじゃないですか!発生して排出される水も室内に透明なパイプを設けドライバーから見えると「おおお!」ってなると思うw
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