マイナーチェンジしたフィットに試乗してきました。グレードはハイブリッドSホンダセンシングという最上級モデル。全グレードでサスペンション取り付け部分の剛性アップ、サスペンションの再セッティング、エンジンマウント見直しによる振動対策などが施され、さらにハイブリッドSでは遮音性を向上させる為にフロントガラスや三角窓を厚いものに交換。車体のアンダーパネルも遮音性の高いものに交換しているという、単に外観を触っただけのフェイスリフトではない、気合いの入ったマイナーチェンジです。
Youtube動画もありますので合わせて御覧ください。
ここが凄い!と感じたのは、まったり走っている時の静粛性と乗り心地です。ノイズ対策を施されたグレードだからか、交通の流れに合わせる程度の速度だとエンジン音もロードノイズも非常に静か。路面のザラつきを上手く遮断した乗り心地と相まって、ツーランクくらい上の車に乗っている感覚で驚きました。ブレーキも回生からパッドに切り替わる瞬間など分からず、ペダルの感触もしっかりしており高度な制御をしていると思われます。コスト制限の厳しいコンパクトカーなのでまったく弱点が無い訳ではありませんが、それは細かく見ていきましょう。
まず乗り始めてすぐ感じるボディ剛性ですが、これはゴリゴリに高いということはないですが、決して低くはなく、必要にして十分に確保されています。スタート直後はザラザラした路面を走るコースですが、路面のザラザラは上手く遮断されています。ハンドルを握る手、シートに触っているお尻や腰には多少路面のザラザラが伝わるものの、その度合いは薄っすら伝わる程度で、上質な乗り心地と言っても過言ではないでしょう。
段差を超える時のショックは少なめ。やや柔らかめで街乗りでの快適性を重視したセッティングだと思いました。橋と道路の継ぎ目などはトンと軽やかにクリアしてくれます。この辺りは日本の交通事情に合っており非常に快適。速度が上がり、曲がりながら段差を降りるような場合には多少フワッとした動きを見せるかもしれませんが、法制速度に少しプラス程度で姿勢を乱すようなことはないでしょう。似た価格帯のVW UP!と比較すると、UP!の方が高い速度域に合わせてサスペンションを設定しているようで、コツコツ感が少し強まるけど速度が上がってもビタッと無駄な動きが少ないように思います。この辺はメーカーの考え方と買う側の好みの問題で、どっちが優れているかという問題ではないですね。フィットが常識的な速度で姿勢を乱すことはないし、UP!が低速で我慢できないほど突き上げが酷いこともありません。
ちょっと高めの速度(あくまでも試乗という中で)でコーナーリングしてみた感触は、乗り心地から予想される通り、穏やかにロールしながら曲がっていくものでした。違和感無く、すぐに慣れると思います。
ハイブリッドということでエンジンとの連携についてですが、とても上手いです。バッテリーがある時はスタートから10km/hくらいまでモーターのみで走り、その後エンジンがかかるのですが、一連の流れで嫌な部分はありません。エンジンがかかる時にわずかな振動と音があるものの、本当にわずかなので路面が悪ければ気付かないレベルですし、路面がキレイでも嫌な感じはしません。純ガソリン車のアイドリングストップからの復帰というのは、停止しているのでよく分かるのですが、ハイブリッド車は少しモーターで走らせた後にエンジンをかけることができるので、同じ振動と音があっても気にならないんですよね。
パワーもコンパクトカーとしては十分。エンジン音は可もなく不可もなくといったところです。大人しく流れに乗って走っているうちはとても静かで、自分がコンパクトカーを運転していることを忘れていました。それが、加速も試してみるかとアクセルを踏み込むと、けっこうエンジン音が入ってくるんですよ。たぶんこれが普通で、大人しく走っていた時の静けさは完全にツーランクくらい上の車に感じました。私のV60より静か、ゴルフ並みと言っても過言ではないかと思います。まぁゴルフは踏んでも静かで、コスト的に常に静かなのはこのクラスには難しいのかもしれません。
パワーとうと、最初はエコモードで走っていたのですが、これを解除するとえらく走り出しが軽くなります。それだけエコモードはパワーを絞っているのでしょうが、同時に燃費には効くんでしょうね。
ハイブリッドはトランスミッションが7速DCTとなるフィットですが、流れに合わせて走っていれば、何の変哲も無いオートマチック車です。発進やノロノロ走行などのDCTが苦手とする場面も違和感無し。そしてパドルによる操作をすればCVTの疑似的でモワっとした感触とは次元が異なるダイレクトな変速を披露してくれます。基本ヴェゼルと同じだと思うのですが、ヴェゼルの方がより鋭い変速だった気がします。ソフトウェアによる違いなのか、私の記憶や感覚が曖昧なのかは分かりませんが、フィットの変速はヴェゼルよりも少しおっとりに感じました。
ブレーキは効きに関しては普通(普通に効かない車なんて今は無いけど)だと思いますが、タッチと言うか感触が素晴らしい。ハイブリットカーは回生ブレーキで電力を蓄えています。大雑把に言えばモーターに電気を流すとシャフトが回転する反対で、シャフトを回せば電気が発生し、それをバッテリーに蓄えるのが回生ブレーキです。この回生ブレーキだけでいかなる速度からも車を停止できればいいのですが、それだけのブレーキ力は回生ブレーキでは発生させられず、通常のブレーキも併用します。2つのブレーキの切り替えや併用する割合は車がしてくれるのですが、我が家のBMW 330eの場合は切り替わっている感覚が分かるんですね。ブレーキを一定で踏んでいても、停止する手前で少し減速Gが変わるんですよ。ペダルのタッチも少し変化します。それがフィットハイブリッドは一切無いのです。これはセンサー、コンピューター、ソフトウェア、ブレーキを高度に制御している証であり、日本のハイブリットカーの凄いところですね。ヴェゼルはブレーキの効き始めが食いつき気味で停止寸前のコントロールがしづらかったのですが、今回のフィットは乗ってすぐ慣れることができました。ブレーキパッドやキャリパーなどの違いなのか、ソフトウェアの問題なのか分かりませんが、これも良い部分です。
最上級グレードですが車両価格はFFが220.5万円、4WDが236.7万円。ナビは欲しいところなので、その他諸費用と合わせて45万円くらいでしょうか。ということは乗り出し価格約265万円。ホンダセンシングもあるし、ほぼフル装備でこの価格ならアリだと思います。個人的にはSのフロントバンパーが長くて好きじゃないのでハイブリッドLがいいのですが、こちらはFFが207.9万円と約12万円しか差が無い。ホイールはSの方がいいし、迷いますね。
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